一先ず読了

前回から思いの外随分と経ちましたね。ネットの世界には殆ど寄り付きもしなかったものですから。
厭な予感からは逃れられないもので、引き摺られるようにして休学することになり早半年。
その間にも色々ありましたものの、親や恋人や友人に支えられつつ何とか生きてます。まだ。

さて先日、夏目漱石の作品を幾らか読み終わりました。
漱石先生は極度の神経衰弱、胃潰瘍などかなり「重たい」ものを幾らも身内に抱え、尚且つ小説家でありながらも50の歳まで生きておられたそうです。
小説家というのは一般の人よりも「目が良い」、つまり世界の見ない方が、聞こえない方が、気付かない方が幸せな事を一々感じとってしまい、その痛みを文字におこすことで一層身体に抉り刻む様な職業なのではないでしょうか。
鋭敏すぎる感覚はその心を蝕んでやみません。何も知らない阿呆でいるほうが唯の人間としては如何ほど幸福か。
肉体にも精神にも斯様のものを抱え、どうして彼は生涯をまっとう出来たのでしょう。どうして早々に自ら幕を下ろすことはなかったのでしょう。
どうして最期まで耐え切れたのでしょう。
…彼は(後世名を残すこととなりましたが)、その生涯は幸せだったでしょうか。

どろどろの血に塗れても、その中に1粒の真珠は見付けられるでしょうか。それは尚輝いているでしょうか。
塵を取り込み真の珠を作り上げるあこや貝。
せめてその様に生きていけるでしょうか。
それは、幸せであってくれるでしょうか。